井上隆純

NPO法人ヒューマンネット21下関代表  



NO.1いのちの歓び

 

今日地元のイベントで歌手の加藤登紀子さんのコンサートを鑑賞しました。おしゃべりの中で加藤さんは自分の人生に触れ、人生の第4幕に入ったと話されました。人生の第1幕は生まれてから25歳まで、第2幕は50歳まで、第3幕は75歳まで、76歳以上が第4幕です。

 

人生は困難に満ちています。加藤さんはかって日本が中国大陸で戦争を引き起こし、その後太平洋戦争に突入し、敗戦を迎えるその渦中で満州のハルピンで生まれたそうです。

日本に帰国して今日まで、いろいろな試練に直面しながら、生き抜いてこられた人です。歌う唄の中にでこぼこの人生を生き抜いてきた逞しさと生きることのすばらしさがにじみ出ていました。

皆さんの中にも、想像できないような困難に出会って、それを乗り越えてきた方もいらっしやるかと思います。そして、これからも私たちはいろいろな困難に遭うことがあるでしょう。けれども最終的に「人生はすばらしい!」「私の人生はとても素晴らしかった」と言えるようになれることが、大切だと思います。そしてそれは心がけ一つで可能なことなのです。

 

お釈迦様の悟りの内容に四法印というものがあります。

四法印とは「諸行無常、諸法無我、涅槃寂静、一切皆苦」の四つの言葉です。

諸行無常とは、この世に存在するものは、自然も、社会も、人間も、常でない、絶えず変化しているということです。この私も例外ではありません。私も絶えず変化しているのです。

変化が常態であることが理解できていると、コロナ禍に対する見方も必要以上に心配したり、不安になったりすることなく、困難な状況や新しい変化に冷静に対応できるようになります。

諸法無我とはこの世にあるものは、我が無い、定まった実体がないということです。

 

私たちは縁起によって生まれ、存在し、繋がっているのであり、縁起のつながりがなくなれば、無に帰す存在です。諸行無常ということと諸法無我ということを正しく理解するだけでも、私たちの生活は過度の執着やこだわりを離れ、精神的に安定します。

そのような存在である私たちが、今人間に生まれ、数えきれない多くの人や物に支えられ、生かされてあるということはなんとすばらしいことでしょうか、人間に生まれたいのちの歓びを心から味わいたいものです。


NO.2 いのちの歓びを分かち合う

 

12月も半ば過ぎ今年も残り少なくなりました。 コロナの感染拡大が始まって丸2年経ちましたがこの2年は多くの人にとって失われた2年でした。 高齢者の多くは家に引きこもり自粛生活の繰り返しで精神的にも疲れた人も多いのではないでしょうか。.

今コロナウイルスは新しい変異株オミクロン株の流行が問題になっていますが、日本では国民の多くが2回のワクチン接種を完了し重症化の恐れが無くなっていますので必要以上に神経質にならなくても良いのではないかと思います。

しかし外国ではヨーロッパやアフリカなど多くの国で感染者が増大し、再びロックダウンの危機が高まり、人々の間に不安が高まっています。

私たちは人生で直面する困難にどのように向き合えばよいのでしょうか。

仏教の教えに六波羅蜜の教えがあります。六波羅蜜とは私たちがさとりや目覚めを求め仏道を修する教えですが大きく六つの項目があります。布施、持戒、忍辱、精進、禅定、智慧の6項目です。

 この中で忍辱ということが私たちがコロナに臨む姿勢としてとても大切だと思います。忍辱とは困難に対して耐え忍んでいくということです。人生には様々な困難が起きてきますが、これらの困難は自分を鍛える良い試練と考え前向きに受け止めることが必要です。

政治、経済、社会、気候変動、そして自分自身、あらゆるものが激しく 変化する今の時代に人間として生を受けたということもひとつのご縁です。 自分の上に起きているこのご縁を大切に活かしきるという思いで毎日の生活に取り組みましょう。

 

次に布施という行為は誰でもできる六波羅蜜の実践であり 人生で目覚めを得る大切な行為です。私たちの行動は身で行い、口で喋り、心に思う身口意の三業 から成り立っています。この身口意の三業を整えていくことが、布施という行為を通して人生で目覚めを得る仏道実践の基本なのです。

 布施という実践項目の中には 金銭、物、土地などを寄付する財施、仏法を伝える法施、 自分の行いで布施を行う無財の七施など色々な布施があります。

 やさしいまなざしで接する眼施(げんせ)、人に柔和な笑顔で接する和顔施(わげんせ)、優しい言葉をかける言施(ごんせ)、 身体を使って重い荷物を持ってあげるなどの身施(しんせ)、思いやりの心を持つ心施(しんせ)、乗り物で席を譲る牀座施(しょうざせ)、一夜の宿を提供する房舎施(ぼうしゃせ)など私たちが心がけ次第でできる布施がたくさんあります。 お互いに周囲の人に対して自分で実践できることに取り組み、明るい社会づくりを心がけましょう。それが自分の精神を高めていくことにもなります。

 

 自分だけが幸せであればいい。自分だけが満足すればいいという自分中心の考えを改め、他人の喜びを自分の喜びとし他人の悲しみを自分の悲しみとして受け止めることのできるような人間になりたいものです。それがお互いのいのちの歓びを深めることになるのです。



 NPO法人ヒューマンネット21下関代表 

井上隆純